環境経済学:「環境への影響を計算する」

前回の更新から1ヶ月。気温は実はさほど変わっていないけれど、なんと日の出8時、日没3時だそうな。通りで4時には暗いし、朝家を出る8時台にはまだ自分にとって「早朝」のような雰囲気が漂う。

道路が凍ってないかに気を使い、自転車の鍵が凍り付いて開かないこともいつものこと。車のウィンタータイヤは聞いたことがあったけれど、こっちでは自転車もウィンタータイヤに替えた方がいいらしい。トゲトゲが出てるらしいけど、まだどんな物なのかは見ていない。

初めてのテスト:Our Natural Resources

11月上旬に、Our Natural Resources (私たちの自然資源)という授業が終わった。授業の構成上、最後に大きなグループプロジェクトの締め切りに加えて、大きなテストがあった。5時間ぶっ続けのテストだった。TOEFLやセンター試験を少し思わせる。部屋はテスト専用にデザインされた試験会場で、トイレも中にあるし、食べ物・飲み物を持って入ってよい。壮大に正式そうな仕組みなのに、ポケットに携帯を忍び込ませて、トイレでカンニングする人が居るんじゃないかと思うと、なぜテストを分けて間に休憩を取らないのか、という疑問は解消されなかったけれど・・・^^;

あまりにキツキツのスケジュールで、前日3時間睡眠で5時間のテストに挑むことになった。単位が取れたのか、結果はまだ出ていないけれど、半分できれば合格らしいから、きっと出来たと思う。・・・たぶん。

学際性をウリにしているうちの専攻 (Sustainable Development) は、出身の学部も社会科学・人文科学・芸術・自然科学など、様々。この授業は、サステナビリティのベースになる自然科学の基本を押さえることが大きな目的一つになっていて、農学部で1・2年次には地球学も少しやった自分に取っては、学部時代にどこかで聞いたことがあった内容も多かった。

講義が下手な先生が多くて驚いてしまった。比較すると、アメリカの先生たちはプレゼンも講義もかなりレベルが高いのだということに気づいた。一方で、日本の「一方的に話す」というスタイルをとる先生と質問をしない学生の雰囲気に比べたら、授業中に質問も多く飛んで双方向的なのだけれど。

自然科学出身じゃない友だちの多くが満足そうにしているのに比べ、私は次の授業が始まるのをとても楽しみにしていた。とはいえ、学部時代にすでに自分の「専門」を決めることで、「これは自分の専門外」と決めていた分野に改めて頭をつっこめたのは、視野がまたぐっと広がったのを実感した。

でもいよいよ、次の授業が始まって、いまは2週めに入ったところ。

Man, Society, and Environment: 環境経済学

Man, Society, and Environment (人、社会、環境)という名前のこの授業は、ウプサラ市にあるもう一つの大学、Swedish Institute of Agriculture (SLU)という農業大学で開講されている。ウプサラ大学のキャンパスとSLUのちょうど真ん中辺りに住んでる私は、川沿いを自転車で走って登校するのもさわやかで嬉しい。

この授業は、毎週ちがう分野を扱う。

最初の分野は、環境経済学だった。

学部時代に幾つか授業をとったとは言え、私に取って経済学は完全なる「専門外」だった。だからこそとてもキツイとも思ったけれど、その分すごく大きな収穫があった。

この授業の最後の週には、エコロジー経済学 (Ecological Economics) という分野も扱われる。簡単に言うと、エコロジー経済学は、環境学者・エコロジーをベースにして、経済は社会の一部、それもまた環境の一部と見る。その意味ではもっとラディカル(革新的)。この考え方は「強いサステナビリティ(Strong Sustainability)」 と呼ばれたりする。

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エコロジー経済学(wikipedia: Ecological Economicsより)

一方で、今回授業を受けた環境経済学は、簡単に言うと今のメインストリームの経済学(新古典派経済学、一般に経済学部で勉強される分野)の延長にあると言っていい。下の図もまたwikipediaから借りたものだが、こちらの図は「弱いサステナビリティ(Weak Sustainability)」と呼ばれたりする。どこの企業もいまや、環境や社会に配慮したCSR(企業の社会的責任)を掲げている時代だが、その多くはこちらのコンセプトを使ってる場合が多い。

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環境経済学(wikipedia より)

いきなりムツカシイ言葉遣いになってしまったが、ここで私が言いたいのは、環境経済学のもつ大きな可能性について!!!

環境経済学の大きなウリは、何より環境へのコスト(外部費用)を経済分析において考慮する!!というところ。

現在の経済社会は、GDPを目安にすべて動いていると言っても過言ではない。

しかし、よく耳にするこのGDPは、環境について考慮されていないのである。環境を破壊する行為だったとしても、それは「コスト」として差し引かれない。

ここで、環境経済学はこういった「外部費用」を考慮する方法を提案している。GDPの話に戻れば、「環境会計(Green Accounting)」と言って講義では「Environmentally adjusted domestic product (環境的に調整された総生産)」が紹介された。

GDPの話をすると、日本ではブータンが提唱したGNH(国内総幸福)という言葉が有名だが、それと大きく異なって、こちらは国連レベルで使われている指標だということ。それだけメインストリームの中で使われている。

これが実際にGDPとどれほど違っていて、環境がどれほど考慮されてるのかは、今後調べてみたいところ。

環境経済学のもっとオモシロイと思ったところは、「環境の経済的価値を計算する」というところ。

これこそ、「自然」を「自然」のままで保存するモチベーションになりうるのでは?!

と思うのだけれど、長くなってきたので今日はここまで。

気が向いたら続きを書きます。

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